障害年金訴訟、国の敗訴が確定！第三者の証言だけで初診日が確定できるケースが増える！？

障害年金の初診日を確定するためには、
カルテが残っているか、当時の診察券があるかといった
物証が必要でした。
これに対して、第三者の証言で初診日を認めるよう兵庫県の女性が
裁判を起こし、それが認められたという記事を先日書きました。
⇒「初診日は第三者の証言でも認定できる」という判例が出ました!
この大阪地裁の判決によると、
「初診日は可能な限り客観性の高い資料で特定されるべきだが、
第三者の記憶に基づく証言などを排斥すべきではない」と指摘しています。
まだ地裁レベルなので国が控訴して裁判は続くのかと思っていましたが、
なんと控訴せず、国の敗訴が確定しました。
厚労省は、
「判決を覆すのは難しいと判断した」
とコメントしています。
これにより、今後は同様のケースで第三者の証言だけで
初診日が確定できるという事例が増えるかもしれません。
ただし、どんなケースでも第三者の証言だけで
初診日が確定できるというわけではありません。
今回の判例では、初診日から20年以上経過していてカルテが残って
いなかったのですが、それだけではありませんでした。
①阪神淡路大震災により自宅が半壊し、診察券等が消失していた
②第三者の証言も、「自分の姉が死亡した年でよく覚えている」などという
証言があり、具体的で信憑性が高かった
これらのことから考えると、
第三者の証言のみで初診日を確定するにはカルテが廃棄されていたという
だけでは足りず、本人の過失なく参考資料が消失していること（診察券が災害
で消失したなど）や第三者の証言に信憑性があることなどが求められる
と考えられます。
この条件をクリアできる人は限られていますので、
今回の判例を受けて、カルテがなくても初診日の確定を認めてもらえる人は
そう多くはないかもしれません。
また、もう一つ心配なことがあります。
それは、年金事務所や各共済組合や市町村が
今回の判決を受けてこれまでの対応を変えてくれるかどうかです。
今回の裁判が最高裁の判決であれば非常に大きな影響を役所に与えていましたが、
残念ながら地裁の判決に留まっています。
最高裁の判断に比べて地裁の判決は影響力が小さいのです。
そのため、年金事務所等では何ら対応は変わらない
という可能性もあるのです。
最高裁まで争って負けたらこれまでのルールを見直さなければならない、
それなら今回の事例で争うことはやめて地裁の判決にとどめておくことで
従来のルールはそのままにしよう、
と厚生労働省は考えたかもしれません。
ちょっと私の考え方がひねくれているかもしれませんが…。
障害年金の制度運用・ルールという意味では、
最高裁で白黒つけてほしかったという気持ちはあります。
もちろん、裁判を起こした女性にとっては地裁で確定したということは
非常に良かったと思います。
裁判が長引けば精神的・経済的負担が大きくなります。
そういう意味では、国が控訴しなかったのは英断だと思います。
今回の判決を受けて障害年金の初診日確定ルールが変わる場合は、
厚生労働省が通達を出すかと思います。
そのような通達がでましたら、また記事にしたいと思います。