「初診日は第三者の証言でも認定できる」という判例が出ました!

障害年金を受給するためには、初診日要件・保険料納付要件・障害等級要件
という３つの要件が必要ですが、まず最初に課題となるのが
「初診日の特定」です。
初診日がいつかということをハッキリさせなければ、
上記３要件を満たしているかの判断ができないからです。
そして、うつ病をはじめとした精神障害で障害年金の手続きを行う場合、
この初診日の特定が非常に難しいケースが多いのです。
というのも、
初診日を特定するには初診当時のカルテなどの医証が必要で、
本人の申し立てや医師の記憶では足りないからです。
うつ病の場合、障害年金を受けられることを知らなかったばかりに
手続きが遅れてしまい、初診日から5年以上経過しているといったことは
ざらにあります。
一方、カルテの保存義務は5年と定められているため
5年以上前に初診日があるうつ病者は障害年金の請求ができない
というケースもあったのです。
実際には、カルテが残っていなくても初診当時の診察券や健康診断記録、
薬の処方箋、傷病手当金請求書といった資料を参考にすることで
初診日を特定していく方法もありますが、
これらの資料がなければお手上げといった状況が続いていました。
しかし、画期的な判決が出ました。
障害年金の初診日を特定するための証明としてカルテなどの医証が必要か
どうかが争われた裁判で、
大阪地裁が「第三者の証言などでも初診日を特定できる」と判断しました。
この裁判の概要を説明すると、
会社員だった女性が、1987年に周囲が暗く感じたため眼科を受診し、
失明に至る病気と診断されました。
その後視力が徐々に悪化し、障害の程度が障害年金の対象となったことから
2009年に年金事務所に障害年金を請求したところ、
初診日が確認できないとして却下されました。
初診日を特定するためのカルテは保存義務のある5年が経過していたことから
破棄されており、診察券なども阪神大震災で被災した際に紛失していました。
判決では、
「初診日は可能な限り客観性の高い資料で特定されるべきだが、
第三者の記憶に基づく証言などを排斥すべきではない」と指摘しています。
また、眼科に同行した知人は陳述書で
「女性は治療法がないなどと泣きながら話した」
「自分の姉が死亡した年でよく覚えている」などと説明しており、
「具体的で女性本人の説明にも沿う」と判断しています。
この判例は、
カルテや当時の診察券などがないことにより障害年金を断念していた人に
とって、朗報といえるでしょう。
当時のことを覚えている第三者の証言を集めることで
障害年金を受給できるようになるかもしれません。
ただし、注意しなければならないことがあります。
それは、この判決が地方裁判所の判決であり、
まだ確定したものではないということです。
実際に、厚生労働省は
「厳しい判決。内容を精査し、関係省庁と協議して適切に対処する」
とコメントしており、控訴する可能性もあるからです。
たしかに第三者の証言だけで簡単に初診日を特定できてしまうと、
悪用されるおそれがあるので危険です。
しかし、うつ病などの精神疾患の場合、
障害年金のことを知らなかったばかりに手続きが大きく遅れてしまう
ということが当たり前のように発生しています。
これは、障害年金の周知をほとんど行っていない国にも
原因があるのではと考えてしまいます。
本人に過失がないのであれば、
状況に応じて柔軟に初診日を認定してもらえるように
してほしいものです。