ドクターナビMapは、2,500件を超える迷いから生まれた

From:宮里竹識
世田谷のスタバより、、
ある日の夜のことです。
私の目の前の画面には、私たちが開発しているAIの「診断書チェックの仕組み」が映っていました。
画面の中央で、細いカーソルが点滅しています。
私はマウスを握りしめ、少し冷たくなった指先でクリックしました。
カチッ。
その瞬間、AIがものすごいスピードで診断書の内容を読み始めました。

私は、画面をじっと見ていました。
そして、正直に言うと、少し怖くなりました。
「ここまでAIに任せていいのだろうか」 そう思ったからです。
私が社会保険労務士法人全国障害年金パートナーズを立ち上げたのは、2014年のことです。
開業したばかりの頃、私の武器は「電話」と「紙」だけでした。
相談者の話を、電話でじっくりと聞く。
受話器から聞こえる、涙まじりの消え入りそうな声。
そのすべてを聞き逃さないよう、ボールペンを走らせて紙に書く。
年金の記録を確認し、病院に渡す資料を作る。
完成した診断書を、人の目で一行ずつ、指差し確認しながらチェックする。
パソコンの横には、いつも分厚い書類の束がありました。
紙をめくるカサカサという音。
ボールペンが走る音。
そのすべてが、私たちの仕事であり、誇りでした。
うつ病による障害年金の手続きは、とてつもなく難しいです。
目に見える傷や、血液検査の数値だけでは、あなたの苦しい状態を伝えられないからです。
お風呂に入れない。
食事を作れない。
買い物へ行けない。
薬を飲むことさえ忘れてしまう。
こうした日常生活のリアルな困りごとを、診断書へ正確に反映してもらう必要があります。
だから私は、うつ病の障害年金支援を専門にして、やり方を磨き続けました。
相談の聞き方を変えました。
医師に渡す資料を改善しました。
診断書を確認する項目を増やしました。
一つ失敗すれば、次は同じ失敗をしないようにする。
昨日より今日。
今日より明日。
まるで刀を研ぐように、12年間、少しずつ支援の方法を磨いてきたのです。
そんな中、何度も同じ相談を受けるようになりました。
「障害年金の診断書を書いてくれる病院が見つかりません」
体調が悪い中で、病院へ電話する。
冷たく断られる。
別の病院を探す。
また電話する。
それだけで、心も体もすり減ってしまいますよね。
そこで私たちは、実際に診断書を依頼した案件の情報をすべて記録するようになりました。
どの病院が対応してくれたのか。
どのような点に注意が必要だったのか。
一件ずつ、地道に積み上げました。
やがて、その情報は2,500件を超えました。
現在私たちのホームページにある「ドクターナビMap」は、この記録から生まれています。
このドクターナビMapに掲載されている病院は、すべて障害年金の診断書に協力してくれた病院です。

画面に並んでいるのは、ただの病院名ではありません。
一つひとつの記録の向こうに、「診断書を頼める病院が見つからない」と絶望し、困っていた人がいるのです。
その人たちが歩いた辛い道を、次の人には、もう二度と歩かせたくない。
それが、私たちがドクターナビMapを作る理由です。
そして今、私たちはAIを使った支援にも取り組んでいます。
最初の私は、どこかでこう思っていました。
「大切な仕事は、すべて人間がやるべきだ」と。
職人のようなこだわりです。
しかし、画面を見つめ、考えているうちに気づきました。
私は、人の手で作業することを守りたいのではありません。
私が本当に守りたいのは、「相談者が安心して休める時間」なのです。
AIが書類の見落としを減らしてくれるなら、使えばいい。
AIが情報を早く探してくれるなら、使えばいい。
その分、人間は相談者の声を深く聞くことができます。
言葉にならない苦しさを感じ取ることができます。
「もう一人で抱えなくても大丈夫ですよ」 と、あなたに伝える時間を増やせるのです。
港へ向かう船を想像してください。
目的は、同じ港へ無事に着くことです。
嵐が来たのに、 「この船には長年乗ってきたから」 と、穴の開いた古い船に乗り続ける必要はありません。
船を新しいものに乗り換えても、目指す港が変わっていなければ、信念がブレたことにはならないのです。
むしろ、古い船を守るために港へ着けなくなったら、本末転倒ですよね。
紙からデータベースへ。
データベースからAIへ。
私たちの支援方法は、これからも変わります。
しかし、目的は絶対に変わりません。
それは、うつ病で働けないあなたが、経済的な不安を減らし、安心して治療に向き合えるようにすることです。
あなたは今、昔の自分に戻れないことを責めていませんか?
以前と同じようにバリバリ働けない。
家族を支えられない。
今まで当たり前にできていたことが、できない。
だから、自分には価値がない。
そんなふうに思っているかもしれません。
でも、今までのやり方を変えることは、決して逃げではありません。
大切な目的を守るために、手段を変えるだけなのです。
障害年金を利用することも、その一つの手段です。
障害年金の手続きは、とても難しいです。
その中でも、うつ病による申請は特に難しい。
だからこそ、あなたの残された貴重な力を、書類との格闘だけで使い切ってほしくありません。
私たちがAIを使う目的も、仕事を格好よく見せるためではありません。
あなたが同じ説明を何度も繰り返さなくて済むようにするため。
あなたが手続きに使う力を減らし、休むための力を残すためです。
12年間磨いてきた刀であっても、それより良い道具が見つかれば、私は静かに置きます。
私が忠実でありたいのは、昔のやり方ではありません。
あなたが安心して休める未来です。
ブレないために、私たちは変わり続けます。



