うつ病で障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を取得するデメリットは?

うつ病になった方の中には、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の取得を検討されている方もいるでしょう。

しかし、障害者手帳を持つことに「周囲の方に知られるのが怖い」「何かで不利になるのでは?」というイメージを持っており、デメリットが気になる方も少なくないはず。

実は、一般的に言われている障害者手帳のデメリットには誤解も多く含まれています。

この記事では、障害年金専門の社会保険労務士の宮里が、障害者手帳のメリット・デメリットと、多くの方が気にされる障害年金との関係についてわかりやすくお伝えします。

ここで「障害年金とは何のこと?」と思った方もいるかもしれません。

障害年金とは、病気やけがによって仕事や日常生活などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金のことです。

原則として初診日から1年6か月経過した日(障害認定日)時点の障害の状態が認定基準に該当し、かつ保険料納付要件などを満たす場合、あなたも障害年金を受給できる可能性があります。

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審査が通れば、障害厚生年金3級に認定された場合は最低保障額(2025年度:年額623,800円 ※生年月日により622,000円)を受給できることがあります(※加入状況・等級等により受給可否や金額は異なります)。また、障害基礎年金2級であれば、年額は約83万円です。

障害年金については「うつ病で受給できる障害年金の金額は?必要な認定基準も解説」にて解説しているため、詳しい金額を知りたい方はこちらもお読みください。

うつ病で障害者手帳を取得するデメリット

うつ病で障害者手帳を取得するデメリット

うつ病の方が障害者手帳の取得をためらう最大の理由は、「将来不利になるのではないか」というデメリットへの不安です。

しかし、実際には制度上の不利益よりも、心理的な不安や事実とは異なる思い込みに基づいているケースが少なくありません。

ここでは、障害者手帳を取得する前に知っておきたいことを紹介します。

会社や周囲に知られてしまうかもしれないという不安がある

「障害者手帳を取得すると、役所から勤務先に連絡がいくのではないか」「近所の人に知られてしまうのではないか」と心配される方は多いです。

しかし、障害者手帳を取得しただけで、自動的に会社や周囲に情報が漏れることはありません。

行政には守秘義務があり、個人のプライバシーは厳守されています。ただし、法令に基づく照会や本人同意がある場合など、例外があり得ます。あなたが自分から手帳を見せたり、話したりしない限り、他人がその事実を知ることは一般的には多くありません。

ただし、会社に知られる可能性がある例外として、年末調整で障害者控除を申告した場合には注意が必要です。

会社の経理担当者は、税金の計算のためにあなたが障害者控除を受けていることを知ることになります。

もし会社に知られずに節税メリットだけを受けたい場合は、会社の年末調整ではなく、ご自身で確定申告を行うことで、会社への通知を防ぐことが可能です。

つまり、手続き上の注意点さえ押さえておけば、障害者手帳の有無はあなただけが知ることにしておくことができます。

就職活動や転職活動に影響するかもしれないという不安がある

「障害者手帳を持っていると、一般枠での就職ができなくなるのでは?」「面接で障害者手帳のことを言わなければ経歴詐称になるの?」

これから社会復帰を目指す方にとって、就職活動への影響は大きな懸念点の一つです。

ここでも誤解が多いのですが、障害者手帳を取得したからといって、必ずしも障害者雇用枠で働かなければならないわけではありません。

そして、障害者手帳を持っている事実を伏せて、一般雇用(クローズ就労)で就職活動を行うことは直ちに違法になるとは限りません。

しかし、業務遂行に重大な支障がある障害を意図的に隠して入社した場合、トラブルになる可能性があるため、その点はご注意ください。

業務遂行に重大な支障がない限り、採用面接で障害の有無を自分から申告する法的な義務はないため、ご自身の体調やキャリアプランに合わせて、一般雇用枠か障害者雇用かを選択できる権利が増えると考えるとよいでしょう。

ただし、配慮が必要な働き方(通院配慮・勤務時間の調整など)を希望する場合は、無理をしないためにも、適切なタイミングで会社と相談することが結果的に働きやすさにつながる場合があります。

なかには障害者手帳を持たずに一般雇用枠だけで就職活動をして、入社後に体調が悪化して退職を繰り返してしまうケースも見受けられます。

障害者手帳を取得することで得られる「いざとなれば障害者雇用枠という選択肢もある」という安心感が、精神的な余裕につながることもあるでしょう。

生命保険への加入や住宅ローンに影響するかもしれないという不安がある

「障害者手帳を持つと生命保険に入れなくなる」「住宅ローンが組めなくなる」という話を聞いたことがあるかもしれません。

これも誤解です。正確には、審査に影響するのは「障害者手帳を持っていること」ではなく、「うつ病の治療歴があること(通院・服薬している事実)」です。

生命保険や住宅ローンの団体信用生命保険(団信)の審査では、健康状態の告知が必要です。障害者手帳を持っていなくても、うつ病で通院中であれば、加入が難しくなるケースが一般的です。

つまり、障害者手帳を申請したから急に審査に通らなくなるわけではなく、治療を開始した時点で条件は同じになります。

裏を返せば、障害者手帳を取得したからといって、現在加入している保険が解約になることは通常ありません(※加入時の規約によります)。

また、フラット35など団信への加入が必須ではない住宅ローンや、持病があっても入りやすい引受基準緩和型保険なども存在します。

障害者手帳の有無そのものが決定的なデメリットになるわけではないことを理解しておきましょう。

心理的な抵抗感がある

ここまで制度上のデメリットは誤解が多いとお伝えしましたが、無視できないデメリットがあります。それは、「自分は障害者なんだ」と認めることに対する、あなた自身の心の葛藤です。

専門用語で「自己スティグマ」とも呼ばれますが、障害者手帳を受け取ることで「もう元気な頃の自分には戻れないのでは?」というように感じてしまい、落ち込んでしまう方もいます。

この気持ちは、うつ病と真剣に向き合っているからこそ生まれる感情かもしれません。

しかし、障害者手帳は、あなたの人間としての価値を下げるものではありません。あくまで、現在のつらい状況を少しでも楽にし、社会生活をサポートするための証明書です。

さらに、もし障害者手帳を取得して、症状が回復し不要になったと感じたら、いつでも返納できます。

「一生持ち続けなければならない」と重く捉えず、「今は回復のために使える制度を利用しよう」くらいの気持ちで捉えてみてもよいかもしれません。

うつ病で障害者手帳を取得するメリット

うつ病で障害者手帳を取得するメリット

デメリットへの不安が解消できれば、障害者手帳はあなたの生活を支える大切なものになります。

経済的な負担軽減や、社会復帰の選択肢を広げる具体的なメリットをみていきましょう。

所得税や住民税などの税金が安くなる(障害者控除)

障害者手帳を取得する最大の経済的メリットの一つが、税金の軽減措置(障害者控除)です。

うつ病で働けなくなり収入が減っている方にとっては、「税金が安くなると言われても、そもそも所得がないから関係ないのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、この制度の大きなポイントは、あなたを扶養しているご家族の税金も安くなる可能性があるという点です。

本人の場合

ご自身に収入がある場合、所得税や住民税の計算において一定額が控除され、手取り額が増える可能性があります。

ご家族(配偶者や親など)の場合

あなたと同居し、扶養しているご家族がいる場合、その方の所得税や住民税が減額されるケースがあります。(配偶者控除や扶養控除への加算)

1級は特別障害者として控除額が増え、等級によって控除額は異なりますが、世帯全体で見れば年間数万円から十数万円の節税になることもあります。

公共料金や交通機関、レジャー施設で割引や減免を受けられる

日常生活の様々な場面で、障害者手帳を提示することで割引や減免を受けられます。これらは、家にこもりがちなうつ病の方が「外出しよう」「少し気分転換しよう」という気持ちになるのを後押ししてくれるでしょう。

例えば、以下で割引や減免が適用されることがあります。

  • NHK受信料の減免:世帯構成や手帳の等級などの条件を満たせば、受信料の全額または半額が免除されます。
  • 携帯電話料金の割引:大手携帯キャリア各社には、基本料金などが割引になる障害者向けのプランが用意されています。
  • 公共交通機関の割引:これまで精神障害者保健福祉手帳は、身体障害者手帳に比べて交通機関の割引が少ないのが現状でした。しかし、近年はその差を埋める動きが進んでいます。多くの路線バスやタクシー、私鉄、JRなどで割引が導入されています。
  • レジャー施設の割引:映画館や美術館、動物園、水族館などの多くで、本人と介助者(同伴者)1名の入場料が割引になります。

※割引の内容は、事業者や自治体によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。

うつ病を理由にして障害者雇用枠での就職・転職ができる

うつ病からの社会復帰を考えたとき、「また体調を崩してしまわないか」「通院しながら働き続けられるか」という不安はつきものです。

障害者手帳を取得すると、一般の求人に加えて障害者雇用枠での応募が可能になります。障害者雇用枠での就労には、以下のような特徴があります。

  • 病気への配慮が得やすい:通院のための休暇や短時間勤務、業務量の調整など、企業側から配慮を受けながら働くことができます。
  • 定着率が高い傾向にある: 自身の障害特性を理解してもらった上で働くため、無理をして体調を崩すリスクを減らし、長く働き続けられる可能性が高まります。

もちろん、障害者手帳を持っているからといって必ず障害者雇用枠を選ばなければならないわけではありません。選択肢が一つ増えると考えてください。

障害者雇用枠の選択肢が増えることは、焦らず自分らしい働き方を見つけるうえでの安心材料になるのではないでしょうか。

就労移行支援などの福祉サービスが利用しやすくなる

うつ病で休職・離職した方が再就職を目指す際、ビジネスマナーの復習やストレスコントロール、職業訓練などを受けられる就労移行支援事業所という福祉サービスがあります。

このサービスを利用するためには、自治体から受給者証を発行してもらう必要があります。

障害者手帳がなくても医師の診断書などで申請することは可能ですが、障害者手帳を持っていると申請の手続きがスムーズに進みやすいというメリットがあります。

一人での就職活動に行き詰まりを感じている方にとって、専門スタッフのサポートを受けられる就労移行支援は心強い味方です。障害者手帳はその入り口を広げてくれます。

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障害者手帳の等級と判定基準の目安

障害者手帳には1級から3級までの等級があり、症状の重さや日常生活への支障度合いによって決定されます。どの程度の症状が対象となるのか、目安を確認しましょう。

1級:日常生活の維持が困難な状態

常に誰かの援助がなければ日常生活を送ることが難しいレベルです。自立した生活が困難なほど重いうつ病の状態などが該当します。

2級:日常生活に著しい制限がある状態

必ずしも他人の助けを借りる必要はないものの、ストレスがかかると病状が悪化しやすく、日常生活や社会生活に大きな制限がかかる状態です。

3級:日常生活や社会生活に一定の制限がある状態

ある程度の自立した生活は可能ですが、就労や対人関係において制限があり、配慮や支援が必要な状態です。初めて手帳を取得される方に多い等級でもあります。

【重要】障害者手帳と障害年金は別の制度

【重要】障害者手帳と障害年金は別の制度

多くの方に混同されがちですが、障害者手帳を持っているからといって、自動的に障害年金がもらえるわけではありません。

私たち社労士が伝えたい、両者の違いについてお伝えします。

目的と受けられる支援が違う

最も大きな違いは、「目的」と「得られるもの」です。

障害者手帳の目的は、福祉の増進です。得られるものは、税金の控除や交通費の割引といったサービスや減免です。いわば、生活を便利にするための証明書です。

一方、障害年金の目的は所得の補償です。得られるものは、生活費として使える現金(年金)です。病気で働けなくなったことによる経済的な損失を補うための保険制度です。

障害者手帳を持っていても、それだけで障害年金が支給されるわけではない点に注意が必要です。

障害者手帳と障害年金の等級は連動しない

「手帳が2級なら、障害年金も2級もらえるはず」そう思われている方は多いですが、これは誤りです。

障害者手帳と障害年金は、認定基準が異なるため、等級は必ずしも一致しません。

例えば、「手帳は3級だけれど、障害年金は2級(より重い等級)が認められた」というケースもあれば、その反対も十分にあり得ます。

障害者手帳の等級が低いからといって、障害年金を諦める必要はありません。

障害者手帳を持っていなくても障害年金は申請できる

「まずは障害者手帳を取ってからでないと、障害年金の申請はできない」というのも、よくある誤解です。

障害年金の申請に、障害者手帳の有無は関係ありません。

障害者手帳を持っていなくても、要件さえ満たしていれば障害年金は申請可能で、受給することもできます。

もし今、あなたが一番不安に感じているのが生活費といった経済面であるならば、障害者手帳の手続きよりも先に、あるいは並行して、障害年金の申請準備を進めることが重要です。

うつ病の方が障害者手帳を申請するための流れ

うつ病の治療を続けながら、複雑な手続きを行うのはエネルギーが要ることです。

ここでは、障害者手帳を取得しようと決めた方のために、申請の基本的な流れを3つのステップでわかりやすく解説します。

 ①市区町村の窓口で申請書類を受け取る

まずは、お住まいの市区町村役場の「障害福祉課(名称は自治体により異なります)」の窓口へ行き、精神障害者保健福祉手帳の申請用紙を入手します。

近年は、自治体のホームページから申請書をダウンロードできる場合も増えています。体調が優れないときは、ご家族に代わりに取りに行ってもらうことも可能です。

②主治医にうつ病の診断書を作成してもらう

障害者手帳の申請には、医師による専用の診断書(精神障害者保健福祉手帳用診断書)が必要です。

主治医に「手帳を申請したいので診断書をお願いします」と依頼しましょう。

ただし、精神障害者保健福祉手帳の申請は、初診日(初めて精神科や心療内科を受診した日)から6ヶ月以上経過していることが条件です。6ヶ月未満の時点では診断書を作成できませんので、初診日はいつかを確認しておきましょう。

③窓口へ申請し、交付を待つ

以下の書類を揃えて、再度役所の窓口へ提出します。

  • 申請書
  • 医師の診断書
  • 本人の写真(縦4cm×横3cm)
  • マイナンバー確認書類 など

申請から障害者手帳が交付されるまでには、審査のため通常1ヶ月〜2ヶ月程度、自治体によってはそれ以上かかることもあります。

即日発行されるものではないため、余裕を持って申請しましょう。

うつ病になったら障害者手帳や障害年金を検討しよう

うつ病になったら障害者手帳や障害年金を検討しよう

ここまで、うつ病で障害者手帳を取得するデメリットやメリット、取得方法などについてお伝えしました。

障害者手帳は、あなたが社会で無理なく頑張りすぎずに生活するためのお守りのようなものです。よく言われるデメリットの多くは誤解であり、正しく利用すれば、治療中の生活を支える心強い味方になります。

改めてお伝えしたいのは、一度障害者手帳をもらっても手放すことはできるということです。

治療が進んで体調が良くなり、もう支援が必要ないと感じたら、手帳はいつでも返納できます。また、更新の手続きをしなければ、自動的に効力を失います。

「とりあえず、今のつらい時期を乗り越えるために使ってみよう」というくらいの気持ちで、制度を利用してみるのも一つの選択です。

そして、もしあなたが障害者手帳の取得を考えている理由が「働けなくてお金がない」「治療費や生活費が心配」という経済的な理由であるなら、生活費そのものを補填してくれる障害年金の受給を検討してみてください。

ただし、うつ病で障害年金を受給するためには、専門的な知識と経験があるとさらに安心です。

「自分は障害年金を受給できるのだろうか?」と少しでも気になった方は、うつ病の障害年金を専門とする私たち社会保険労務士(全国障害年金パートナーズ)にご相談ください。

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社会保険労務士法人全国障害年金パートナーズ代表
うつ病の障害年金を2400名以上成功させた社労士
宮里竹識(みやざと たけし)は、うつ病の障害年金に特化した特定社会保険労務士です。障害年金を通じて、うつ病で働けない人に経済的な安心を届ける支援を行っています。初診日や病歴・就労状況等申立書の設計、医師診断書の記載支援など、障害年金の実務全体を一貫してサポートしています。

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