うつ病で労災申請はできる?パワハラの証拠を残すことは難しい?

仕事が原因でうつ病になり、「労災(労働災害)を申請したい」と考えている方もいるかもしれません。

会社が原因なのだから、補償してもらうのは当然だと思うのは自然だといえます。しかし、残念ながらうつ病の労災認定は、ハードルが高いのが現実です。

この記事では、累計2,500名以上のうつ病による障害年金受給をサポートしてきた「全国障害年金パートナーズ」の宮里が、うつ病の労災認定の基準や難易度について解説します。

また、労災が認められなかった場合や、審査を待つ間の生活を支えるための「障害年金」というもう一つの選択肢についてもお伝えします。

「障害年金とはそもそも何なのか」「申請する場合はどのようなサポートが受けられるのか」が気になる方は、下記より私たちの取り組みについて知ってください。

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うつ病で労災認定されるのは難しいと言われる2つの理由

うつ病で労災認定されるのは難しいと言われる2つの理由

「長時間労働やパワハラで仕事がつらい」との事実があっても、それが国に労災として認められるには高いハードルがあります。まずはその現状を正しく理解しておきましょう。

精神障害の労災認定率は約30%台と低いから

令和3年以降、精神障害による労災請求件数は増えています。

しかし、実際に労災認定される割合(認定率)は30〜35%程度で推移しています。つまり、申請した人の約3人に2人は「不支給(労災ではない)」と判断されているのが現実です。

身体の怪我と異なり、うつ病は目に見えず、「業務だけが原因か」「私生活に問題はなかったか」の判断が難しいためです。

出典:精神障害の労災補償状況

会社側が非を認めず、対立や証拠集めが負担になるから

労災申請には、業務が原因である旨を示す客観的な証拠が必要です。

タイムカードや業務日報による長時間労働の記録、パワハラ発言の録音データ、メールのやり取りの履歴などが主な証拠となります。

しかし、会社側が「うちは悪くない」「本人の性格や私生活に問題があったのではないか」と主張し、調査への協力を拒むケースも少なくありません。

心身ともに消耗しているうつ病の状態で、会社と対立しながら証拠を集め続けることは、精神的に大きな負担となります。

証拠を集めようとしたことで心身に負担がかかり、症状がさらに悪化する場合も考えられるため、慎重に検討する必要があります。

それでも知っておきたいうつ病の労災認定3つの基準

それでも知っておきたいうつ病の労災認定3つの基準

認定のハードルが高い現実があるとはいえ、明らかに業務が原因でうつ病を発症した場合には、労災を申請する権利があります。

厚生労働省が定めている認定基準は3つあり、これらをすべて満たしていると判断されることが、労災認定の条件となっています。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病している
  2. 発病前おおむね6か月間に業務による強い心理的負荷がある
  3. 私生活や体質など仕事以外の原因が主な理由ではない

それぞれについて詳しく解説します。

①認定基準の対象となる精神障害を発病している

医師により、うつ病や適応障害など、対象となる精神障害の診断を受けていることが大前提です。

「仕事がつらくて眠れない」「出社するだけで涙が出る」といった状態であっても、医師の診断がなければ申請できません。

まだ病院を受診していない方は、心療内科や精神科への受診を最優先にしてください。

初診日は、労災申請や休業補償の待機期間(3日間)の起算点となる重要な日です。症状を感じたらできるだけ早めの受診をおすすめします。

②発病前おおむね6か月間に業務による強い心理的負荷がある

労災認定において重要な要素の一つが、業務による強い心理的負荷の有無です。

単に「仕事が忙しかった」「上司との関係が悪かった」程度では、認定に至らない場合が多いのが現実です。

「極度の長時間労働(例として、発病直前の1か月間に160時間以上の残業があった等)」や「人格を否定するようなひどいパワハラ」など、客観的に見て強烈なストレスがあったかどうかが調査されます。

③私生活や体質など仕事以外の原因が主な理由ではない

離婚や家族の死、借金問題など、私生活(業務外)のストレスが主な原因ではないかが確認されます。また、過去に精神疾患の既往歴がないかも調査対象です。

会社側が責任を逃れようとする際に、こうした個人の事情を指摘してくることもあります。

「うつ病になったのは仕事のせいだ」と確信していても、審査の場では第三者が判断する現実を理解しておく必要があります。

うつ病で労災申請をすべき理由

うつ病の労災認定のハードルは高いですが、もし認められれば手厚い補償が受けられます。具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

休業補償給付を受けられる

うつ病の労災認定を受けると、休業補償給付を受け取れます。

休業補償給付とは、仕事ができず給料をもらえない場合、給付基礎日額の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が支給される制度です。

休業補償給付を受けられる

ちなみに、休業補償給付は非課税です。そのため、手取り額としては働いていた頃の水準に近い補償が受けられます。

うつ病の療養が長期化した場合でも、この補償が生活の支えとなるでしょう。

障害補償給付を受けられる

治療を続けても症状が固定し、後遺障害が残ってしまった場合には、障害補償給付を受け取れます。

障害補償給付は、残存した障害の等級(第1級〜第14級)に応じて、年金または一時金が支給される制度です。

うつ病が完治せず、日常生活や就労に影響が残り続けた場合の長期的な補償として位置づけられています。

慰謝料や損害賠償請求がしやすくなる

労災認定されるのは、国が「病気やケガと業務に関連性がある」と認めたことになります。

これを根拠として、会社に対して安全配慮義務違反による慰謝料や損害賠償を請求しやすくなることもあるでしょう。

労災認定そのものは会社への賠償請求とは別の手続きですが、認定された事実は民事上の請求においても重要な判断材料となります。

医療費の自己負担が実質0円になる

労災認定されると、うつ病の治療にかかる医療費が全額補償されます。

通院が長期にわたるうつ病の治療において、医療費の負担がなくなることは、経済面と精神面において、大きな安心材料となります。

うつ病で労災を申請するデメリット

労災申請には手厚い補償がある一方で、見落とせないリスクやデメリットも存在します。申請を検討する際は、両面をきちんと理解したうえで判断することが重要です。

手続きが複雑で負担が大きい

労災の申請書には、発病に至るまでの詳細な経緯を記入し、それを裏付ける多くの資料をそろえる必要があります。

うつ病によって思考力や集中力が低下している状態で、これだけ煩雑な手続きを進めることは困難であり、心身への負担は決して小さくありません。

申請を進める際は、できるだけ信頼できる方のサポートを借りることを検討してください。

会社や同僚との関係が悪化する恐れがある

労災申請を行うと、労働基準監督署が会社へ調査に入ることになります。

会社側が調査に協力的でない場合、申請者との対立構造が生まれるかもしれません。職場に居づらくなったり、将来的な復職が難しくなったりする可能性があります。

回復後に元の職場へ戻りたいと考えている方は、この点を慎重に考慮する必要があるでしょう。

労災認定のタイミングによっては傷病手当金の返還が発生する

労災の審査結果が出るまでの間、健康保険の傷病手当金を受給しながら生活する方が多くいます。

しかし、労災と傷病手当金の重複する期間については、傷病手当金の返還が発生します。

資金の余裕があるかどうかも含めて、事前に確認しておくことが大切です。

うつ病で労災を申請する流れ【5ステップ】

うつ病で労災を申請する流れ【5ステップ】

うつ病の労災申請のメリットとデメリットを理解したうえで、それでも申請を進めたい場合の手順を解説します。

一人で抱え込まず、医師や弁護士などの専門家と相談しながら進めてください。

①うつ病の診断を受ける

まず最初に行うべきことは、心療内科や精神科を受診し、医師の診断を受けることです。

受診の際には、現在の症状だけでなく、「仕事のどのような状況がつらかったか」「いつ頃から症状が出始めたか」を具体的に伝えることが重要です。

医師に業務との関連性を把握してもらうことが、後の手続きをスムーズに進めるうえで大きな意味を持ちます。

また、初診日(初めて医師に診てもらった日)は、労災申請において重要な基準日となるため、何日だったのかしっかり記録・記憶しておきましょう。

症状を感じたら、できるだけ早めに受診することをおすすめします。

②労災申請に必要な証拠を集める

次は、労災申請に必要な証拠を集めましょう。

具体的に集めておきたい証拠としては、下記が挙げられます。

  • 長時間労働を示すタイムカードや出退勤の記録
  • 業務上のやり取りがわかるメールや社内チャットの履歴
  • パワハラや暴言の発言を記録した音声データ
  • 日々の業務内容をまとめた日誌

同僚が状況を知っている場合には、証言を得られる可能性についても検討しておくとよいでしょう。

なお、退職後は会社のシステムや資料にアクセスできなくなるため、証拠の収集が極端に難しくなります。

在職中の早い段階から、ご自身で記録を残しておく習慣をつけておくことが重要です。

③労働基準監督署に必要書類を提出する

続いて、所轄の労働基準監督署に労災請求書を提出します。

提出書類の中には、事業主(会社)の証明が必要な欄があります。

しかし、会社が協力を拒み、証明印を押してくれない場合でも、「事業主証明不能」として申請書を提出することは制度上可能です。

会社の協力が得られないからといって申請を諦める必要はありません。まずは労働基準監督署の窓口に相談してみてください。

④労働基準監督署の調査に対応する

必要書類の提出後、労働基準監督署による調査が始まります。申請者本人への聞き取り調査や会社関係者(上司や同僚など)への聴取、主治医への意見聴取などが行われます。

発病に至るまでのつらい経験を詳細に振り返り、話さなければならない場面があります。

思い出すことで症状が悪化するリスクもあるため、体調と相談しながら慎重に対応することが大切です。

家族や友人、同僚など信頼できる方や弁護士に付き添ってもらうことで、精神的な負担を軽減できる場合もあります。

⑤労災認定が下りる

すべての調査が終わって認定基準を満たしていると判断された場合、支給決定通知が届き、休業補償給付や障害補償給付などが開始されます。

そうなると、次のメリットが得られます。

  • 休業補償給付を受けられる
  • 障害補償給付を受けられる
  • 慰謝料や損害賠償請求がしやすくなる
  • 医療費の自己負担が実質0円になる

一方、認定されなかった場合でも、審査結果に不服がある場合は審査請求(不服申し立て)を行うことは可能です。

ただし、その手続きにも時間と労力を要します。認定されなかった場合のお金の備えについても、あらかじめ考えておきましょう。

うつ病の労災申請で注意すべきは請求権の期間

うつ病(精神疾患)の場合、労災の権利はずっと続くわけではありません。請求権がある期間は以下のとおりです。

  • 休業補償給付:2年
  • 障害補償給付:5年

「いつか申請しよう」と思っているうちに時効を迎えないよう注意が必要です。

特に休業補償給付と医療費は比較的短い期間であるため、申請を検討しているのであれば早めに行動することが重要です。

うつ病の労災申請を弁護士に依頼する場合の費用相場

うつ病の労災申請を弁護士に依頼する場合の費用相場

自力での労災申請が難しい場合、弁護士に依頼する選択肢もあります。ただし、弁護士費用がかかるため、相場を知っておきましょう。

相談料

多くの法律事務所では、初回相談は30分5,000円〜1万円程度です。なかには、初回無料としているところもあります。

着手金

法律事務所によっては、着手金が発生する場合もあります。着手金とは、依頼した時点で発生する費用です。結果に関わらず支払う必要があり、費用相場は20万円〜40万円程度です。

報酬金

報酬金は、労災認定が成功した場合に支払う費用です。慰謝料や損害賠償請求など、弁護士に相談して得たお金の10%〜20%程度、または一律で数十万円という設定が多く見られます。

実費

そのほか、交通費や郵便代、診断書作成料、コピー代などは、数万円が別途必要になるのが一般的です。

労災が認められないときの備えである障害年金

ここまで説明してきたとおり、労災申請は、時間や費用、負担のリスクがあります。そこで、もう一つの選択肢である「障害年金」について知っておいてください。

障害年金とは?労災との違い

労災は、業務上の災害に対する補償です。一方、障害年金は、病気やケガで働きにくくなった方を支える公的な制度です。

労災認定が下りなくても、障害年金なら受給できるケースはあります。

また、要件を満たせば労災と障害年金の両方を受け取ることも可能です。その場合は、併給調整が行われますが、それでも生活の大きな支えとなるでしょう。

労災の結果を待つ間、障害年金を申請して生活の基盤を整える方が一般的です。。

障害年金で受給できる金額の目安と更新

障害年金で受給できる金額は、納めている年金の種類や家族構成、症状の重さによって異なり、年間約60万円〜200万円を超えるケースもあります。

具体的な金額については、お近くの年金事務所で確認してください。

ただし、うつ病での障害年金は、一生支給されるものではありません。うつ病を含めた精神障害の場合は有期認定となることが多く、定期的な更新(1〜5年ごと)が行われます。

「働いていると障害年金はもらえない」は誤解

「少しでも働いていると障害年金はもらえない」と諦めている方が多いですが、これは誤解です。

特に障害厚生年金3級の場合、就労していることだけを理由に直ちに不支給となるわけではありません。

仕事内容や勤務時間、職場で受けている配慮(残業免除や配置転換など)、欠勤の頻度などが総合的に審査されます。実際に、働きながら受給している方もいらっしゃいます。

会社に知られるリスクが低い

障害年金の手続きは、基本的に個人と年金事務所の間で行うものです。そのため、自分で障害年金をもらっていることを言わない限り、会社や同僚に通知されるようなことはありません。

ただし、同居の家族がいる場合、自宅に届く年金証書などの郵便物で知られる可能性があります。

しかし、私たち「全国障害年金パートナーズ」にご依頼いただいた場合は、家族に障害年金のことを知られたくない方に配慮して、郵送物に社名や「障害年金」を記載しません。

担当社労士の個人名だけ封筒から見えるようにして本人に送るなどの対応を行っています。

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うつ病による経済的な不安を解消するのは労災だけではない

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うつ病の障害年金を2400名以上成功させた社労士
宮里竹識(みやざと たけし)は、うつ病の障害年金に特化した特定社会保険労務士です。障害年金を通じて、うつ病で働けない人に経済的な安心を届ける支援を行っています。初診日や病歴・就労状況等申立書の設計、医師診断書の記載支援など、障害年金の実務全体を一貫してサポートしています。

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