就職前にうつ病歴がある人が自殺した場合、通常労災は認められません。ところが、はじめての判決が出ました! | 社会保険労務士事務所 全国障害年金パートナーズ
From:宮里竹識
下北沢のオフィスより
うつ病などの精神疾患で労災が認められるためには、
業務以外にうつ病の原因があると労災認定の可能性が低くなります。
労災というのは仕事が原因でケガや病気になった場合に適用されるものなので、
就職する前にうつ病にかかっていたのであれば、
そのうつ病が再発しただけで仕事が原因ではない、
として労災の適用は認められませんでした。
しかし、平成26年9月17日の東京地裁でこれまでと異なる判決が出ました。
この事件は、過去にうつ病と診断された女性が就職し、
過労で自殺したことに対して遺族が労災を適用させるよう求めた裁判です。
被告である国は、
「自殺の原因となった精神障害は、就職前に発症したものだ」
と、これまでと同じような取扱いをするよう反論していました。
しかし、東京地裁は、
「女性は就職した直後に経験のない店舗の責任者を任されたことで、
強い心理的な負荷を受けて、精神状態が悪化したといえる」
と判断して、女性の自殺を労災と認めました。
就職する前にうつ病にかかっていたことのある人が自殺した場合において、
裁判所が労災を認めるのははじめてのことです。
この判決は画期的なものだと思いますが、
これで今後はうつ病による労災が認められやすくなるかというと
そうでもありません。
なぜなら、うつ病の原因は一つではなく
様々なストレスが積み重なって病気を発症するからです。
つまり、仕事以外にもうつ病を発症する要因があるのであれば、
やはり労災は認められにくいのです。
それに、地裁レベルの判決ですので、
国が控訴する可能性もあり現時点では労災の認定基準が変わる可能性は
低いと言えます。
今回の判決が例外的な取扱いと考えるのが妥当でしょう。
うつ病による労災認定は、まだまだハードルが高いですね